昔の日本の暦は、空の月の満ち欠けをベースにした太陰太陽暦というものを使っていましたが、この暦は季節とのズレが生じる問題がありました。そのズレを修正するため、閏月という月を暦に追加したそうです。
そこで疑問になるのはどのように修正したのかということです。
この記事では、このテーマについて書いてみたいと思います。
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目 次
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メトン周期
紀元前2000年ごろ、バビロニア人は太陰太陽暦を使っていました。その頃は、彼らは日や閏月を適当にカレンダーに足していたのです。しかし、これでは正確な暦は創れませんでした。
そこで、彼らの中で天文学に強い科学者が、19年の間に、閏月を7回暦に入れると季節との誤差がほぼ無くなるということを発見したのです。
いつメトン周期を使い始めるのか?
それは、季節と暦のズレがなくなった時かなと思いましたが、導入するならすぐにしたいでしょうから、暦の途中で、本来の暦の始まりになる日を見つけ、メトン周期を元にした暦を導入するというやり方で良いかと思います。
ということは、このメトン周期を使ったカレンダーを作るためには、天文学的知識と天文観測技術が必要だと思います。そうしないと、季節の移り変わりを正確には測定出来ないからです。
メトン周期の計算方法
では、メトン周期とはどのような計算をするのかというと、
19太陽年は、
約365.24219日/太陽年 x 19太陽年 = 約6939.60161日
235朔望月(太陰太陽暦での235ヶ月)
約29.530589日/太陽太陰暦の一月 x 235朔望月 = 約6939.68842日
19太陽年(太陽暦19年) | 235朔望月(太陰暦235ヶ月) |
6939.60161日 | 6939.68842日 |
6939.68842 – 6939.60161 = 0.08681日(約2時間のズレ) | |
※ この差は、219太陽年が経過した時、約1日のズレになる |
235朔望月とは、太陰太陽暦の12ヶ月 x 19年 + 7朔望月 = 235朔望月 となるので
メトン周期では、太陰太陽暦19年の間に7回の閏月を入れると太陽年とほぼ同じ日数になると言う計算になります。
しかし、それでも219太陽年たつと約1日のスレが発生するので、219太陽年経過するたびに、改暦を行ってズレを修正する必要がありました。
中国での太陰太陽暦
二十四節気の導入
古代中国では、太陰暦に基づいた暦は太陽の位置とは無関係であり、農作業などには不便でしたので、太陽の運行を元に作成した二十四節気が太陰暦の暦に導入されました。そして、二十四節気の暦と太陰暦の暦(月の運行による暦)が1ヶ月ほどずれた時に、余分に太陰暦の1ヶ月を閏月として暦に入れました。
昔の中国~殷周時代(いんしゅうじだい)【殷(いん)の時代:紀元前17世紀~紀元前1046年、周(しゅう)の時代:紀元前1046年~紀元前256年】では、年始は冬至の頃にされていました。この冬至がいつなのかを測定するのには、二至二分(二至:夏至と冬至、二分:春分と秋分)を計測し易い日時計が使われていました
どのようにして太陰暦と太陰太陽暦の間のズレを修正していたのかと言うと、殷の頃は、自然の観測でズレが一ヶ月くらいになった時に、「十三月」というような閏月を入れるといった簡単な手法だったようです。
考え方としては、単純計算すると、太陰太陽暦は一年が354日で太陽暦より11日短いので、年始を冬至とした時、次の冬至は今年よりも11日遅く来て、その翌々年は、22日遅くきて、さらに、その次の年には33日遅くくる事になります。そのタイミングで、閏月を年末に一回入れます。
このやり方でも少しずつ、ずれが大きくなりますから、どこかの時点で、改暦をしなくてはいけないと思います。
中国での周期の活用
メトン周期の導入
そして、春秋時代頃から、メトン周期の考え方に基づく暦が使われていたようです。
中国では、メトン周期を使用した暦の作り方を章法と呼びました。そして、19年に7回の閏月を含む周期のことを章、その周期を切り替える年を章首と呼び、章首の年の開始日を冬至の11月1日に決めていました。
中国の戦国時代には、四分暦というメトン周期が使用されました。メトン周期の導入により、月明を中気から命名することが出来るようになり、中気がない月を閏月としました。
破章法の導入
五湖十六国時代(304年の漢の時代から439年北魏の華北統一まで)からは、メトン周期をやめて、新しい暦の手法である破章法を使用するようになりました。複雑な計算により暦のズレをなくす制度は高くなりましたが、冬至がずれたりするなどの不具合があったようです。
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二十四節気とは何か?
二十四節気とは、中国の戦国時代に太陰歴による季節のズレを修正するために考案されたものです。二十四節気は、冬至を年始とし、地球が太陽を公転する日数を24等分し、一年を12の節気と12の中気に分類し、各節気・中気に季節を表現する名称が付けられました。1節気毎に約15日で分割しました。
この節気の始まりは、立春で、その後、中気、節気、中気と交互に繰り返します。これを季節の移り変わりの目安としました。
次に、一年を24分割するのにも、平気法と定気法と言う2通りの方法がありました。
平気法(恒気法)
まず、平気法について説明しますが、この方法では、太陽暦の一年を日数で24等分し、約15日毎に中気、節気が作られました。しかし、この方法では、地球は太陽の周囲を楕円形の軌道を描くので、地球からみた太陽の黄道上での移動速度は一定ではありません。
定期法(空間分割法)
そこで、
春分点を起点として、黄道を15度ずつに24分割して、太陽がこのそれぞれの点を通過する時を二十四節気としました。
春分点を起点として黄道を360度に分割したものが黄経といいますが、この黄経が30の倍数である点は中気、30の倍数以外は、節気といいます。
この中気と節気の順番を次の「節気と中気一覧」でわかりやすく書いていますので、御覧ください。
節気と中気一覧
参考として、各月の節気と中気を紹介します。
月名 |
節気/中気 |
定期法 | 恒気法 (平気法) |
季節・俳句・説明 | ||
よみ | 太陽黄経 | 日付(頃) | 日付 (頃) |
|||
1月 (節気) | 立春 | りっしゅん | 315度 | 2/4 | 2/5 | 春たてば 梅咲く枝に 雪模様 鶯なきて 春は来にけり |
1月 (中気) | 雨水 | うすい | 330度 | 2/19 | 2/20 | 雪解けに 畑整う 農家にて 草花蒼く 小雨ふるらむ |
2月 (節気) | 啓蟄 | けいちつ | 345度 | 3/6 | 3/8 | 啓蟄に 柳の芽吹き ふきのとう 虫穴出ル 何処へ行くのか |
2月 (中気) | 春分 | しゅんぶん | 0度 | 3/20 〜 3/21 |
3/23 | 縁側で 日光浴で すやすやと 寝息立てるは 子猫のポンタ |
3月 (節気) | 清明 | せいめい | 15度 | 4/5 | 4/7 | いろんな花が満開になり、花見をする季節です。短歌が思いつかん |
3月 (中気) | 穀雨 | こくう | 30度 | 4/20 | 4/22 | 田畑の苗植えが終わり雨が降り始める頃。 |
4月 (節気) | 立夏 | りっか | 45度 | 5/7 | 5/7 | 夏が始まる頃。でもこの頃はまだ涼しい。 |
4月 (中気) | 小満 | しょうまん | 60度 | 5/21 | 5/23 | 植物が成長し茂ってくる頃 |
5月 (節気) | 芒種 | ぼうしゅ | 75度 | 6/6 | 6/7 | のぎを持つ稲科植物の種まきをする頃 |
5月 (中気) | 夏至 | げし | 90度 | 6/21 | 6/22 | 一番昼が長く、梅雨の季節。 |
6月 (節気) | 小暑 | しょうしょ | 105度 | 7/7 | 7/7 | 梅雨があけ、本格的な暑さがやってくる頃。蝉みんみん |
6月 (中気) | 大暑 | だいしょ | 120度 | 7/23 | 7/23 | 快晴で猛暑、あっつー |
7月 (節気) | 立秋 | りっしゅう | 135度 | 8/7 | 8/7 | 秋の気配がするとされるが、残暑が続く。 |
7月 (中気) | 処暑 | しょしょ | 150度 | 8/23 | 8/23 | 暑さも過ぎて秋に入る頃 |
8月 (節気) | 白露 | はくろ | 165度 | 9/8 | 9/6 | 大気が冷えてきて白露が出始める |
8月 (中気) | 秋分 | しゅうぶん | 180度 | 9/23 | 9/21 | 昼夜の長さが同じになる。 |
9月 (節気) | 寒露 | かんろ | 195度 | 10/8 | 10/7 | 露が冷気で凍る頃、冬鳥が来たりて 菊美しや |
9月 (中気) | 霜降 | しもふり | 210度 | 10/23, 24 | 10/22 | 霜で真っ白の草をみて木枯らしふくや肌恋し |
10月 (節気) | 立冬 | りっとう | 225度 | 11/7 | 11/6 | 冬の気配と思いきや 紅葉いつ来る秋の日々 |
10月 (中気) | 小雪 | しょうせつ | 240度 | 11/22 | 11/21 | 手をつなぎ歩く小道に小雪降るらむ |
11月 (節気) | 大雪 | たいせつ | 255度 | 12/7 | 12/7 | 音なき音に目が冷めて 雪降りしきる白世界 |
11月 (中気) | 冬至 | とうじ | 270度 | 12/22 | 12/22 | 長き髪の毛 恋しくて 一夜を過ごす冬至かな |
12月 (節気) | 小寒 | しょうかん | 285度 | 1/5 | 1/6 | 寒の入り 窓開けるや 小雪降るらむ |
12月 (中気) | 大寒 | だいかん | 300度 | 1/20 | 1/20 | 寒さが最も厳しくなります。マフラーまいて寒さを凌ぐんですね。 |
※節気: 黄経が30の倍数以外 ※中気: 黄経が30の倍数 |
二十四節気の実際の活用の仕方
月中に中気が含まれていて、年始の月を雨水が含まれる月と定めるとします。すると、太陰暦の日数は二十四節気(太陽暦)よりも短いので、年数が経過すると、中気が入らない月が来ます。その月を閏月にするという決め方でした。
この二十四節気は中国の気候をもとに各節気の名前がつけられましたが、日本で使用するには季節に違いが有るため、中国の季節名の他に、土用、八十八夜、入梅、半夏生、二百十日などの雑節という季節の名前を旧暦にとりいれました。
参考URL:
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